製薬にかかる期間やコストを縮小させるために、AIの存在は注目されています。製薬には、基礎研究、非臨床試験、臨床試験、申請と審査という4つの段階があります。その中で、AIは基礎研究段階での最適化を図ることができます。薬を開発する上で始めに行う必要があるのは、ターゲットとなる身体に適応する薬の候補となる物質の選定です。ターゲットとなる身体のタンパク質は10万種以上あり、それに最適な組み合わせとなる物質を見つけ出すのは非常に時間やコストのかかる作業です。豆知識ですが、薬となる物質は製薬会社のライブラリーの中に数万種あり、最適な組み合わせを見つけるのは途方もありません。そこで、この作業を簡略化するために、身体のタンパク質と薬の候補となる物質の組み合わせの演算をAIに任せてしまおうということです。現在でも流行している新型コロナウイルスに対する治療薬やワクチンについても、AIによる早期開発が行われています。一見万能に思えるAIですが、課題もあります。新薬開発にはターゲットとなる身体の情報が必要不可欠ですが、医療機関が所持している医療データはあくまで治療のためのものであり、AIが解析できる形になっていないことです。また、AIを活用するためのシステム開発や管理に多額のコストがかかってしまいます。AIの開発や維持費用の問題を解決し、AIが十分なデータを確保できる環境を整えることが、製薬へのAI利用に最も必要なことであると言えるでしょう。